◆「環境のために分別してるのに…」から始まった話
「これ、古紙に出せばいいよね」
新しい靴を買って、箱から出すとふんわりした紙が詰められている。
私は迷わず、それをリサイクルごみ用の袋に入れようとしました。
だって、見た目は“紙”だし。清潔で薄くて、軽いし…燃えるごみに捨てるのは、なんだか“もったいない”気がして。
でも最近、ネットでたまたま目にした記事に、こんなことが書かれていました。
「靴や鞄の詰め物に使われている“昇華転写紙”は、実は古紙に混ぜてはいけない“禁忌品”です」
…え? 何それ? 昇華…てんしゃし?
正直、聞いたこともない言葉でした。でも、知れば知るほど「これはまずいかも…」と思えてきたんです。
◆“1枚の紙”が、100トンの再生紙をダメにする?
昇華転写紙(しょうかてんしゃし)というのは、もともと布に色を移すための特殊な印刷紙なんだそうです。
たとえば、ユニフォームやTシャツ、エコバッグなどにカラフルな柄をつけるとき、昇華性インクという特殊なインクが使われていて、それをいったんこの紙に印刷し、熱をかけて布に転写する…という仕組み。
つまり、「紙に色がのっている」ように見えて、実は「色を移すために設計された紙」なんですね。
で、問題はこのインク。
普通の印刷インクと違って、熱や湿気で再び“発色”する性質を持っているんです。
たとえ印刷済みで、すでに色が薄くなっていても、再生紙工場で紙を溶かす工程でこのインクが再び“よみがえって”しまうんですって。
するとどうなるかというと…
再生された紙の表面に、青や赤の斑点がぽつぽつ…
それがまるで“あじさいの花”のように見えることから、「あじさい斑点」と呼ばれることも。
この状態になると、印刷にも使えず、商品にもならず、結局は何十トン単位の紙がムダになる。
PRPC(古紙再生促進センター)によれば、たったA4用紙1枚の昇華転写紙が混ざるだけで、最大100トンの再生紙が使えなくなることがあるそうです。
◆「気づかないまま混ぜてた」私のような人が、他にもいる
私は完全に“善意”で古紙に入れていました。
なんなら、「ちゃんと分別してる自分、えらいかも」くらいに思ってた。
でも、それが逆に迷惑をかけてしまっていたかもしれないなんて…すごくショックでした。
Twitter(X)では、ゴミ清掃員としても知られる芸人・マシンガンズ滝沢さんがこんな投稿をしていました。
「靴や鞄に詰められてる薄い紙は、昇華転写紙の可能性があります!
これは可燃ごみです!資源に混ぜないでください!」
文章に「!」がついてるのも納得です。
多くの人が私のように“勘違い”で古紙に入れてしまっているのだとしたら、それが全国の製紙会社でトラブルを起こしてるのかもしれないと思うと、急に「他人ごとじゃないな」と感じたんです。
◆見た目で判断できる? 昇華転写紙の特徴チェックリスト
とはいえ、捨てる時にいちいち「これは昇華転写紙かも?」と疑ってたらキリがありません。
でも、いくつか見分けるポイントがあることもわかってきました。
🔍 昇華転写紙っぽい紙の特徴
- 絵柄や文字が「左右反転」している
(転写するために鏡写しになっていることが多い) - 普通の紙よりもかなり薄くて、柔らかい
- インクのにおいがやや独特(感じる人も)
- こすった時にインクがにじむ(アルコールで色落ちしやすい)
靴や鞄の中に入っていたり、衣料品の緩衝材に使われている紙で、上記に当てはまるようなら、“古紙”ではなく“可燃ごみ”に出すのが正解です。
◆【中間まとめ】紙に見えても、紙じゃないこともある
たった一枚の紙が、何十トンもの再生紙をダメにしてしまうかもしれない。
誰かの「良かれと思って」の行動が、逆に環境負荷を高めてしまっているかもしれない。
それを知った私にできるのは、まず知ること。そして伝えること。
次のページ(後編)では、この紙がどうして日常に入り込んできたのか、
そもそも“詰め物”の紙がどう使われ、どんな流通で私たちの手元に届くのか、
そして「どうすればこの誤解は減らせるのか」について、やさしく深掘りしていきます。
◆なぜ“こんな紙”が靴やバッグに入ってるの?
調べていくうちに、気になる疑問が出てきました。
どうしてこんなに問題のある紙が、わざわざ靴やバッグに詰められてるの?
普通の紙じゃダメなの?
その理由は、コストと便利さにありました。
🔁 余った紙が“梱包材”に
昇華転写紙は、主に**布製品のプリントに使われたあとの「端材」**なんだそうです。
一度使われた転写紙は、インクが抜けていて色も薄くなり、もう印刷には使えません。
でも紙としては「薄くて」「軽くて」「柔らかい」。
だから業者の間では「緩衝材にちょうどいい」として、靴やカバンの中詰めなどに再利用される流れができてしまったのです。
つまり、昇華転写紙が使われていること自体が“もったいない精神”から来ていたのかもしれません。
でも、その“再利用”が、別の場所でもっと大きな損失を生んでしまうことになるとは、使ってる側も気づいていなかったんですよね。
◆「可燃ごみにするのは、もったいない?」——その気持ち、よくわかる
私は分別の時、つい「紙を燃やすなんて…」と罪悪感のようなものを感じていました。
“紙=リサイクルするもの”って、なんとなく染みついてるじゃないですか。
でも、このケースだけは例外。
昇華転写紙は、「リサイクルできない紙」です。
その理由は、繊維ではなくインクの問題だから、どんなに見た目がきれいでも、きちんと分けなければならない。
もしかしたらこれ、
「もったいない」気持ちに寄り添った分別のルールを、もっと伝えていく必要があるのかもしれません。
◆“生活者の知恵”として知っておきたいこと
たとえば、次のような場面に心当たりはありませんか?
- 靴を買ったとき、箱の中に薄い紙が入っていた
- バッグを開けたら、ぐしゃっと詰められた紙が入っていた
- 衣料品の梱包に、印刷された薄紙が巻かれていた
これらの紙が、昇華転写紙であることは多いです。
全部が全部そうとは限りませんが、「ちょっと薄いな」「色が反転してるな」と思ったら、燃えるごみで処分しておけば安全です。
しかもそれが、100トンの紙を救うことにつながるかもしれない。
なんだかちょっと“いいことした気分”になりますよね。
◆本当に必要なのは、「知らなかった」を責めないこと
私自身、この記事を書きながら何度も思いました。
「知らなかったなぁ…」「危うく、間違えて出してたかも」って。
でもこれは、知識の有無の問題じゃないんですよね。
誰かがちゃんと教えてくれれば、誰でもできること。
間違えてたことを、知った時に「変えればいい」だけのこと。
リサイクルって、環境の話だけじゃなくて、
「気づいた人から優しく伝えていく」ことが大事な気がします。
◆やさしく伝えるための3つの知恵
ここで、私が今回学んだことを“日常で使える知恵”としてまとめてみます。
✔ 1. 「靴や鞄の詰め物」は“燃えるごみ”へ
見た目が紙でも、特徴があったら迷わず可燃ごみで。
反転した文字・模様、極端に薄い紙、インクがこすれるようなものは要注意。
✔ 2. 自治体の分別ガイドを確認
多くの市区町村では、「昇華転写紙=リサイクル不可」と明記されています。
「靴 詰め物 分別」「昇華転写紙 ◯◯市」などで検索すると対応もわかります。
✔ 3. 家族や周りの人に、さりげなく共有
「そういえば靴の中の紙って古紙じゃないんだって〜」
この一言で、家の中の“誤解”がひとつ減ります。怒らず、気軽に伝えるのがコツ。
◆おわりに:「知ってる」が未来を守る
私はこれまで、靴の中の紙なんて、気にしたことすらありませんでした。
でも、そこから環境の仕組みや、資源が巡るルートを垣間見た気がします。
再生紙がうまく作られれば、森林を守ることにもつながる。
100トンの紙が守られるって、すごくないですか?
だから、今日から私たちができるのは——
- 紙に見えても“捨て方”を考えること
- 知ったことを、優しく共有すること
- 自分の中で「知ってる」を一つずつ増やしていくこと
大きなことじゃなくていいんです。
その一歩が、明日をちょっと良くするんじゃないかなと思っています。